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DSC02881わたしが最初のギターを作りはじめたのは1994年6月(あとで調べたら1992年でした)。どうしてある日突然ギターを作ろうと思ったのかいまから考えてみても、その理由が分かりません。どうしてギターでなければならなかったのか、それも分かりません。思い付いてからというものは、機会ある毎に製作法を求めて書店や図書館を見て回りました。しかし当時はギターの作り方を教えてくれる本などはありませんでした。材料などもどこで買ったらいいのか、どんな工具が必要なのか、まさしく五里霧中でした。
生の材料から作り出すのは諦めて、キットを求めました。キットには作り方をていねいに教えてくれるような親切な説明書は入っていませんでしたから、最初から試行錯誤の連続でした。取りあえずバイオリン製作の本を参考にしながらの作業でした。仕事から戻ると食事もそこそこに、狭い部屋にブルーシートを広げ、古い食卓の脚を組み立てて作業をし、1時間もすると掃除をしてシートを片付け、テーブルの脚を外してしまわなくてはすぐに寝る時間になってしまいます。そんな状態ですから、その記念すべき1号器が完成するまでに1年8ヶ月もかかってしまいました。それでも諦めずに続いたのですから、私がギターを選んだことは間違いではなかったのでしょう。
ところがこの第1号器はバリバリというだけで鳴ってはくれませんでした。

東京町田市の玉川学園にバイオリン製作者、茶位幸信さんという方がおられるということを知り、さっそく門をたたきました。茶位さんは音のいいギターをお作りになることでも名の知られた方です。では次の木曜からおいでということで、私のほんとうのギター製作が始まりました。
茶位「親方」のもとで都合3本のギターを作りました。若いお弟子さんに混じって、週に2時間の作業を楽しみました。このときの楽しさはいまでも懐かしく想い出します。ここには楽器工房によくある「門外不出」の秘伝などはありませんでした。ギターに関する基本の全てを余すところなく教えてもらいました。そうはいってももちろん茶位ギターと同じ音が出せるわけはありません。これは当然のことです。そこには確かに「秘密」があります。しかしそれは自分で工夫しながら会得するものなのです。

キットになくて茶位工房にあったもの。それはていねいな指導とちょっとしたヒントです。音の出るギターを作るコツというか、長年の経験から生まれた法則です。欧米(特にアメリカ)のギター関係のホームページを覗いてみると、日本でなら決して公表しないだろうと思われるような「秘密」を包み隠さず公開している例に出会います。自分が試してみて、これはいいと思われる技術や治具、手順などを自分だけのものとせず広く知らせようとしています。ひとつの理由として、それだけ自分で何かを作ってみようと思う人々の層が広いからなのですが、茶道や、華道などの世界にみられるように閉鎖的な「道」の歴史を持つ国の文化との相違ともいえます。インターネットによるギター製作の通信教育を見たり、たくさんの部材屋さんの広告を目にしたりすると、いかに広い国とはいえこれだけの供給に応えるだけの需要、つまり自分で作ろうと思う人々がたくさんいるのだなと感じます。

わたしがギター作りを覚えるにあたり、近くに茶位親方のような人がいたこと、快く教えてもらえたことなど、そういう意味ではわたしはとても運がよかったのだろうと思います。たいていの人は楽器を作ろうと思っても教えてくれるひとが見つからなかったり、仮に見つけても自宅から遠かったりで、なかなかチャンスがなく、そのまま諦めてしまっているのではないでしょうか。そんな願いをもった人にひとつのきっかけと場所を提供したいというのが「クラシックギター製作塾・TAMANIWAワークショップ」開塾の動機です。わたしに与えられた幸運を他のひとにも分かち合いたいと思ったからです。しかし誰もがギター製作に向いているわけではありません。とはいうもののまず作ってみなければ自分が向いているかどうかも分かりません。私の場合がそうです。最初に作り出して初めて自分がこんなにもギター作りが好きだったということに気がついたのですから。元来ものを作ることが好きであること、音楽とりわけギターが好きであること、この2つが必須条件でしょうか?

 

それではワークショップのことを書きましょう。弦楽器の大半は「木」でできています。木は自然にあるもの、身近にあるものです。そして誰でも一度はノコギリやカンナを使った経験はあるはずです。カンナを使ったことのないひとでも、木のかけらをナイフで削ったことはあるでしょう。それで充分です。特に大きな力は要りませんから、女性でもお年寄り(わたしもお年寄りです)でも気軽に作ることができるのです。要は愛情をこめて作ること、いい楽器を作るコツはこれです。
DSC02884ギターファンには木工的な技術などわたしよりはるかに優れた方もいらっしゃるはずです。演奏技術などはわたしの方が教えてもらう立場にあります。ですからこの塾では「教える」という形式はありません。一緒に楽しみ、意見を出し合い、工夫をしてみる場なのです。お互いが知っていることを伝え合う場なのです。どうしたら「いい音」が出るのか、そもそも音はどうやって響くのかなどを同好の士と語り合っていたらそれこそきりがありません。2週間では足りなくなるのではないかと心配します。

一度に滞在していただく人数はお一人。お仲間と一緒という場合でも二人までです。わたしが茶位親方のもとで習ったときもそうでした。新しいテクニックを覚えるときや疑問が生じたときには一対一の方が断然有利です。

 

作業は朝9時に始まります。12時から2時までは昼休み、そのあと夕方6時まで製作に励んだ後は夕食(自慢をするわけではありませんが、わが家の料理はおいしい)、朝食・夕食とも7時です。夕食後、雪の夜などは薪ストーブの前でゆっくりとおしゃべりをして過ごすこともできます。お断りしておきますが、歩いていける範囲にはいわゆる「遊ぶ」場所はありません。散歩をする場所はいくらでもございますが......運がよければカモシカやリスに出会えます。ギター曲のCDもたくさんあります。要するに滞在者として過ごしながらギターを作ってもらうわけです。

2004年8月30日、工房オープンの直後、塾生第1期生、寄藤さんがギター作りに挑戦しました。カンナも持ったこDSC01317とがないという若者です。どうなることかと危ぶみましたが、ていねいに作業をしたことが功を奏して、立派に音の出る楽器が完成しました。「ここをできるだけ平らにして」と指示をしたら、フィンガーボードの面だしに半日かかりましたが、それはそれは完璧な平面になりました。フレットをヤスル必要もないくらいに高低差はなく、試奏でもビレません。これには脱帽しました。こういった几帳面さも楽器作りには必要なことです。ヘッドのデザインやヒールの加工などは、初めてのことでもあり、多少難が残りますし、用心のためにサウンドボードなど少し厚めに設定したので、音ののびが多少不足気味という欠点はありますがとても立派なギターです。

 

最後の3日間はフレンチポリッシュに挑戦しました。とまどうことの連続のようですが、家に帰っても挑戦は続きます。どんなお知らせが届くか楽しみです(あんまりうまくいかなかったようですが)。最終日の晩には寄藤さんの演奏を聴かせてもらいました。(実は彼、ここでも一日2時間以上も練習をするという熱心なギタリストなのです)

DSC01372あっという間の18日間でした。到着した日の朝の気温は19.5度。9月17日6時は10.5度でした。季節は確実に移り変わっていました。

 

 

 

 

もっとも新しい塾生は第6期生のA.Cさん。もっとも新しいだけでなく最若年でもあります。13歳、彼女の通っている学校の中等部最終学年の卒業プロジェクトの課題としてギター製作を選びました。もっとも初めはだれもが「それは無理だ」と翻意を促したのだそうですが、それを押し切ってやって来たのです。東京から各駅停車を乗り継いで来るという熱意に押されてこちらもできる限りのことをしました。IMG28992キットではなくどうしても一からやりたかったという気持ちは実って見事に立派なギターができあがりました。学校の課題ですからただ作るだけではなく、プロジェクト発表のための資料も集めなくてはなりません。ですから製作メモは実に詳細です。メモや日誌はすべて英語で書かれています。つきそいのお父さんは写真を撮ったりメモの手伝いです。トムさんがいちばん力を発揮したのは食後の皿洗いでした。バイヤーズ式レイズドフィンガーボード、650ミリ、21フレットまであります。わずか髪の毛いっぽんのすき間が空いても妥協しない強さがあり、教えるこちらにとっても大変貴重な勉強になりました。最終の2日間は時間が足りず休憩時間を削ってのオーバータイムなどもやりましたが、できあがったギターを抱える彼女の顔は実にうれしそうでした。IMG16052大の大人にも負けない楽器を作ってくれたAmiちゃんを誇りに思います。

 

 

 

 

 


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工房、作業場のことを述べましょう。建物は木造2階建て、それほど大きな家ではありません。工房は建物の基礎部分にあります。デッキの下の白い部分です。1,2階は居住部分となります。滞在していただく方は2階のこぢんまりした部屋を利用してもらいます。ルーフウインドからは星を見ることのできる、屋根裏部屋のような感じです。

滞在期間は延べ2週間。その人の技術に合わせてカリキュラムを組み、材料を調えます。技術が不足する人や体力のない女性の場合には時間短縮の意味で、ある程度機械力の助けを借りることになります。半完成のキットを使うこともあります。

 

 

 

ギターという楽器はできあがってしまったらもうおしまいというものではありません。ギターに限らず楽器は音楽的に「いい音」が出なければ楽器とはいえません。また「いい音」が出てもうまく弾かなくては音楽にはなりません。でもそれが買った楽器でなく自分で作ったギターなら、少しくらい音が悪くたって......

できあがったギターを弾きこなす、不満な点があったらあちこち調整してみる、それでもその楽器に満足できなかったら、さらにいい「音」を求めて新しい楽器を作る...... この趣味はやればやるほど到達点はさらに深くなっていきます。第2期生のY.Aさんはすでに5本ほどのギターを作られています。item2

 

多少音はよくなくても、世界にひとつしかない、しかも自分で作ったギターを弾く、さらに「音」を求めて探求を続ける。これは他の人には真似のできない個性豊かな趣味といえるでしょう。

第3期生として南陽市にお住まいのH・I氏が毎日曜日に製作に通われました。モデルはダニエル・フレドリッシュ。なんと7弦ギターです。2005年末、雪が降り出す頃完成しました。その後そのギターの音に飽きたらず、ネックを残して他の部分はまったくイチから作り直すという作業にかかりました。塗装寸前まで来ています。無事完了しました。


新たに2007年から始まったレイズドフィンガーボードの製作に挑戦した塾生は、第5期生埼玉のT.Sさんです。塗装も完了して音もかなりのものだということでした。それから8ヶ月後、工具、ジグ、材料などをすべて自前で揃え、第2号器が完成したという報告がありました。奥さまへの誕生プレゼントだそうです。P1000335640スケール、エゾマツを使用しています。さらに年内にもう1本製作してこれは米国在住の息子さんへのプレゼントにするのだそうです。

 

 

ご希望があって、手の小さな女性のためのギターを作ったことがあります。弦の長さ、ネックの幅など小さい手にも合うように計算して作りました。とても楽しい作業でした。
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現代のギターはスペインで完成したといわれています。スペイン人の手の大きさは日本人と較べてどうなの

でしょうか?だいたいギターのうまい人は指も長いのではないでしょうか?もちろん小さい手の持ち主でありながら巧みに演奏するプロのギタリストもいますが、素人のための楽器はプロの使うものと同じサイズでいいのかなぁと思ったりもします。

ネックの幅やフレットの間隔など自分の手に合わせて作るということも、自分で作るなら難しくはありません。DSC01809わたしの孫のために弦長480ミリという小さなギターを作ったこともあります。フレットの計算以上に難しいのが全体のバランスです。これも研究対象としてはおもしろいものです。孫のギターは大きなウクレレのような響きをしています。ものの本には弦の長さを何%短くすれば、ボディは何%小さくするのがいいなどという理論があるようですが、しかしギターはどれひとつとして同じ音をだしません。一概に理論通りにはいかないことも確かです。

 

 

 

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